人生に疲れ、闇の中でセミリタイアを願う

30代で癌に侵され、治療して会社に復帰したが肺に転移し、再度治療後会社に復帰するもパワハラでうつ病となり退職。人生に疲れ働く気力を失う。もはや不労所得しかない…株式投資で配当金生活を叶えてみせる!

健康を犠牲にして、手に入れた金がたったの2000万円(番外編)

もうかれこれ24年前の話になる…

当時私は20歳、高級料亭に就職し、板前見習いとして修行の日々を送っていた。

 

その当時は『料理の鉄人』等の料理番組が大人気で、私も和食の道場六三郎みたいになりたいと思い朝から晩まで日々修行に励んでいた。

 

と言っても入って1年目の小僧なのでやることは、誰よりも一番先に出勤して、大きな鍋に水と高級利尻昆布を入れて火にかけて出しを取る。


あとは、洗い物と後片付け、掃除、親方へのお茶出し、賄い作り、それから魚の水洗いと言ってウロコと内臓等を取って血をきれいに水で洗い流してからタオルで水気を拭き取って先輩板前に渡す作業だ。

 

その他、ぬか床を渡されて日々きゅうりや大根、なす等のぬか漬けを作るのが仕事もある。

帰りは先輩方が帰った後、一番最後に火の元の確認や戸締まりをしてやっと帰れる。

 

もちろん、目上の者には、絶対服従の世界なので大変だ。

怒られるのが仕事だと言われ、とにかく厳しい。


でも自分の場合は先輩方には恵まれた方だと思う。
嫌な先輩はいなくて、そりゃ時には厳しいけど、良く面倒を見てくれ教えてくれたので温かかった。

 

この高級料亭は、今はない。
時代の流れで経営が厳しかったのだろう。

 

だって一番高いコースで1人8万円だから
次が5万円のコースで一番安いのが3万円があったと思う。

 

流石にお客も凄い人が来る…
偉い政治家の方々が芸能人もたくさんきた。
私が今でも覚えているのは、山本譲二さん、石田ゆり子さんは覚えてる。

 

山本譲二さんは、トイレでバッタリ遭遇したから覚えてる。
石田ゆり子さんは、うちら板前全員と一緒に記念写真を撮ってくれたんだけど、経緯は忘れた。その写真どこかへいってしまったのが残念!

 

よくよく思い返して見ると確か、石田ゆり子さんサイドがもし良かったら記念に板前さん達と一緒に写真を撮りませんかと言ってくださったような記憶が…

 

記憶違いだったらすみません。
でも高級料亭でお忍びで来られる方ばかりだったから、こちらサイドからそんな失礼なお願いはしなかったと思う。

 

この高級料亭は、有名だったから著名人も来るし、テレビの取材や撮影がひっきりなしで1ヵ月に1度はあった。

 

撮影や取材があると一番下の自分は大変だった。通常の仕事だけで精一杯なのに…

 

一番大変だったのは、SMAPの中居正広さんが初主演の連続ドラマだった。

主題歌が大黒摩季さんの『ら~ららら~』ってやつ。

そのドラマの料理監修がうちの親方だったから大変な目に…

 

だから余計取材が多くて大変でした…

 

ある時、親方に味いちもんめの撮影があるから東映の撮影所に一緒に付いてくるよう言われた。

 

1年目の小僧が撮影に行ってやることあるのか?と思ったが、親方は何も言ってくれず先輩が教えてくれた。

 

先輩『板前見習い役の中居くんが大根の桂剥きを失敗するところの手元を演じるんだよ。』

 

あ~なるほど。
ようは『てタレ』ってやつですか!
年も近いし、1年目の見習いということで自分に白羽の矢がたったらしい。

 

よし、中居くんの手元を見事演じきってやろうと意気揚々と当日望んだ…

撮影当日は、料亭が休みの日だから確か土曜か日曜のどっちかだったな。

 

俺も休み返上だし、しかも無給なんだよね…
朝早く親方と撮影所へ向かう。

 

親方は、昔ながらの職人気質な方なので無口だし、俺から怖くて喋りかけられないしで終始黙っていた。

 

撮影所について、早速親方は撮影用の料理の材料などを準備していた。

俺は何したらいいんだろう。
居場所に困る…

 

そのうち中居くんが来てスタッフと打ち合わせをしていた。
側で見守るしかない…

 

大根の桂剥きのシーンの打ち合わせをしていた時に比較的側で聞き耳を立てていた自分はそれきたっと思った…

 

ところが…

 

中居くんは、初主演でヤル気満々だったのだろう、大根の桂剥きを失敗する手元は自身でやると言い出した…

 

え・・・

 

中居くん『別に失敗する役なら俺でもできるじゃん。』

 

・・

いやそうだけど…

・・・

いや中居くんのいう通りだけど…

・・・・

だけど休み返上しかも無給でわざわざ連れて来られた俺の立場はどうなるの…

言われて来ただけなのに…

 

と俺は心の中で呟いた…

 

まぁ中居くんは、こっちの事情なんて知らないだろうしねぇ…

でも近くで待機している俺の姿は、見えてるはずでしょ、目も合ったし…

 

俺を見て何か感じない?

頼むから空気読んでよ~(笑)

 

・・・

 

ということで無情にも、てタレ出演はキャンセルとなりました…

 

さぁ困った…
朝9時頃から撮影所に入ったが親方の話では終わるのは夕方頃だろうとのことだったのでまだまだ長い…

 

何もすることがなく、スマホなんてなかった時代だから時間潰せないよ…

ただ耐えるしかないのか…

 

親方は料理の準備をしてるが、お手伝いすることないか聞いてみてもお前ができることはないっていうし…

 

あなたが連れて来たんでしょうが…

頼むからやることくださいよ~

 

と心の中で叫ぶ…

親方が仕事しているので座れもしないし、呆然と立ったままで親方の仕事を見つめる…

といきなり元気のいい挨拶が聞こえた…

 

撮影所はその人の明るいオーラに包まれ、和やかなムードに変わる。

凄く明るいオーラだ…

 

私の暗い心を照らしてくれた…

その方は、あばよでおなじみの柳沢慎吾さんでした…

 

撮影所の雰囲気を明るく変えちゃうパワーに圧倒され、皆が笑顔になってる。

さっきまでとは全然違う…

 

柳沢慎吾さん、素晴らしいです!

 

と今度は今井雅之さんの怒号が(笑)
なんか喧嘩しているシーンですかねぇ。

 

ドスの効いた声が大きくて迫力あるなぁ~

 

親方は仕事が一段落したみたいで座りながら野際陽子さんと談笑していた…

やっと座れる…
なんだか足が痛い…

 

親方と野際陽子さんを遠くで眺めながら親方ってあんな優しい顔で笑って話するんだなぁ…

親方のあんな姿は初めて見たわ…

 

午後3時くらいになったかな~
一向にやることなく、親方が仕事を始めたので立っていた。

 

すると…

小林稔侍さんが私に話しかけてきた…

 

小林稔侍『疲れるでしょう。どこかで座ってゆっくりしていてください。』

 

ああ、誰も見向きもしなかったこの下っ端の小僧に、優しいお言葉をかけていただき感激した。

 

撮影所で初めて話しかけられ、気遣いを受けた。

 

この人凄い…

なんか人としての格が違う感じだった…
おそらく小林稔侍さんは、売れるまで相当苦労したに違いない…

 

だからこそ、分け隔てなく誰にも気遣いや感謝の気持ちを持っているのだろう。

まさに親方の役にピッタリだ…


こんな凄い人が親方だったらと思ってしまった…

普通は皆、親方には挨拶するけど、自分には挨拶しないので余計鮮明に覚えているんです。

 

やっぱり本当に凄い人って、下の人への気遣いも凄いなと思った…

 

だって下の人達が上の人を支えているのだから…

上の人は、下の人がいるから上にいられるのだから…

 

勝者は、敗者がいるおかげで勝者でいられるのだから…

敗者を、グズ扱いする勝者は、本当の勝者ではない…

 

敗者に感謝する人こそが真の勝者だ!!

 

・・・

 

結局終わったのは、午後5時頃でした…
親方と一緒にタクシーで帰りました。

 

親方から先にお前の寮に行っていいぞとのことでタクシーの運転手さんに住所を伝えるがわからないようだ。


カーナビがない時代だから住所では無理なのか?
説明してくれって言っても俺だって上京したばかりだし、車乗らないから道知らないよ…

イライラした親方は、もうお前ここで降りろと冷たい顔で言われ…

 

最寄り駅までは、乗せてくれたのであとは20分くらいかけて歩いて寮まで帰った…

帰り途中ふと今日の1日はいったいなんだったのだろうと思いながらも、小林稔侍さんの温かい言葉に救われ感謝した…

 

以上かれこれ24年前の思い出でした…